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社会の底辺を這いずりながらいつか逆転を夢見る男のブログ。
ツール
プロフィール
HN:
彩木
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1985/02/21
職業:
自由人
趣味:
エロゲ/サッカー/自作PC/読書
自己紹介:
駄目フリーター(二十歳)
公務員試験での一発逆転を狙いながら、フラフラと空中分解寸前の生活を続けている。高卒、前職は某地方公務員だったが、DQNな部署に飛ばされ熱意を失い自主退職。退職金+貯金で安アパートに一人暮らし、煙草と酒に依存し、ぐずぐずに腐りながらも、最近はようやく前向きになってきたかも。
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誰か助けてください、この真の暗闇の中から救ってください。
神は見えません、人は信じられません、自分が生きていません。
誰かこの世界を壊してください、甘い杏の頭を打ち付けてコンクリートにぶちまけてください。
痛みは救い、希望は悪、世界は敵。
誰かこの世界を救ってください、くだらない世界を助けてください。
あまりにも醜く生き辛いこの世界を正してください。


それはあくまでも静かに魔的に残酷に行われた悲劇。
風船のように膨れて炸裂した少年の頭蓋の前に佇む一人の男。

薄オレンジ色に染まる幸福を絵に描いたようなとある商店街の一角、
止まる時間、叫ぶ母親の声、それはどこか鴉の叫び声に似ていた。

この世界は何時からこんなにも狂ってしまったのだろうか。
或いは、世界は最初から狂っていたのか。
少年の母親は狂ったように叫び続けていた、その手が抱くものは少年の骸。



ぞわぞわする、街角の喫茶店で事の一部始終を目撃していた僕は身震いした。
それは突然だった、母親に連れられて道を歩く少年が何かに驚愕したように目を見開き、突然に硬直。
次の瞬間にはその頭蓋の中身は周囲にぶちまけられていのだ。


逃げ出したい気持ちはあるがしばらく椅子から立ち上がることも出来そうになかった。
縋る様な気持ちで目の前に置かれていたコーヒーカップを口元に運ぶ、それは真っ赤な脳髄の味がした。


僕は今まで普通に生きてきた。
それなりに勉強して二流大学に入り、
何も考えず機械のように知識を吸収するだけの日々、一人で居る事に慣れ始めた六月。


その日の出来事は僕の世界への認識をどこかズレたものにした、
誰にも相談できる事ではなかったし、語るべき友も居なかった。


ただ、僕は一つだけ疑問を持った。


『何故少年は死ななければならなかったのか?』



どうしようもないことに夜も眠れず、狭い四畳半のアパートで寝返りを何度も打った。


ある夜、僕は決心した。
上着を羽織って夜の街へと出かけると、10日ぶりに事件のあった場所へと向かった。



しとしとと雨は降り続いていた。
透明なビニール傘から見上げた空は暗かった。



------そこに彼は居た。



「やぁ、そろそろ来る頃だと思っていた。」



彼だ、あの日、少年の前に突然現れた男。
そいつは今、こうしてつかつかと僕へと歩み寄っている。
いつか見た映像が頭をリフレインする、風船のように膨れて炸裂した少年の頭蓋の前に佇む一人の男。


「く、来るな。」


「それは警告かな? この前の少年のように私を炸裂させるつもりか?」



平然と、しかし慎重に、彼は僕から数メートル離れたところで歩みを止めた。


「とても、怖いな、怖いな、さすが最強の異能。」


何かに警戒する素振りを見せる彼。


「・・・さっきから何を言っているんだ?」


ふむ、と彼は思案するように手を口元に添えた。


「無自覚、無認識の凶器にしてあの破壊力か、何とも素晴しく横暴な力じゃないか。」




雨はまだ降り続いている。
目の前の男は傘を差していないにも関わらず、まったく濡れていなかった。
その事実に気がついてから傘を持つ手の震えが止まらない、



何かがおかしい。


ーーーーこの世界は狂っている。



「違うな、佐伯、狂っているのは君の脳だ。」



「・・・っつ!」


雨は振り続いている。


「君は今から五年前、地方のとある病院で手術を受けた、違うかな?」


それは突然の交通事故、
通学路を歩いていた僕は歩道に乗り上げたトラックに衝突された。
後から聞いた話では、
偶然にも病院の前だったため、
救急車すら使わずそのまま、運転手によって担ぎ込まれたらしい。


「そこは、ある機関の秘匿研究所だった。そこで君は全身の殆んどを紛い物に取り替えた、
 そして意地汚く今日まで生き延びてきたんだろう?」


「・・・・・・・。」


「・・・知っているか?
 データによれば君は呼吸をしなくても死なない、
 その機能は君の脳と他者を騙すためのものに過ぎない。
 脳を除く72パーセントが人工物、当時の技術の最高の結晶が君だ。」


「だが君はその後何も無かったかのように日常へと帰っていく、何故か?
 君を手術した技術者、開発者、プランに関わった者の殆んどがその日の内に爆死したからさ。
 そう、君が10日前にあの子供を殺したように。」


「僕が・・・、殺した・・・。」


「そうだ、お前が殺した、いや、殺して当然さ、お前を引いたトラックの運転手すら機関の者だ。」


いったん言葉を区切り、彼はスーツの胸ポケットから煙草を取り出した、


「ふぅ、・・・煙草は嫌いか?」


「いえ、別に。」


僕は目の前の男の言葉に打ちのめされていた、
まさか?と思う反面、事故から一週間の記憶を僕は持っていない、
その過去は捨てた、・・・待て、思い出すな佐伯。


「良かったじゃないか、佐伯。」



「え?」


「俺は、いや、俺もお前と似たようなモンさ、
 ・・・そして劣化版だ、もう長くは持たない。」


「だからなのか、お前を見たとたんピーンと来た、
 機関から持ち逃げした書類の中にお前のことも書いてあったしな。
 コードネーム、candy man お前は雨じゃなくて飴の男だ。」


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