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社会の底辺を這いずりながらいつか逆転を夢見る男のブログ。
ツール
プロフィール
HN:
彩木
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1985/02/21
職業:
自由人
趣味:
エロゲ/サッカー/自作PC/読書
自己紹介:
駄目フリーター(二十歳)
公務員試験での一発逆転を狙いながら、フラフラと空中分解寸前の生活を続けている。高卒、前職は某地方公務員だったが、DQNな部署に飛ばされ熱意を失い自主退職。退職金+貯金で安アパートに一人暮らし、煙草と酒に依存し、ぐずぐずに腐りながらも、最近はようやく前向きになってきたかも。
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人語を解する猫ソノラとの出会い。
そして狂気は現実となり、
蒼弥は弓を手にした。



draw the bow imperceptibly slowly



ぬちゃりとした感触と鉄の匂いで蒼弥は目を覚ました、

目の前に広がる赤、

急に現実味を帯びる世界、

ベットを飛び出し廊下への扉を開ける。


「・・・嘘だろ?」


扉の向かい側の壁を中心に広がる緑色の液体、
そして壁に残る矢傷。


「全部夢じゃなかったのかよ、性質の悪い悪夢以外のなんだって言うんだよ!」


夜の続く限り『異形』を射殺し続ける夢、

それがもし現実であったとするなら?


「おはようご主人様、ずいぶん遅い目覚めだったね。」


魔的に整った顔立ち、
真っ白いワイシャツ、
すらりと伸びた足、
そしてその口調。


「・・・もしかしてソノラ?」


「正解、ご主人様はなかなか勘が鋭いみたいだね。」


彼女は満足げに頷くと、
くるりと身を翻して居間に入っていった。

俺は一瞬呆けてしまった、

彼女のその仕草はあまりにも自然だったからだ。


「・・・人になってる。」


はっと気を取り直す。
いつまでも廊下で佇んでいるのもなんなので、
居間に向かう、
時計を見れば既に12時だ。


「今日はサボるか・・・ん?」


そういえば彩香が来ていないし、
学園からの電話を捌いた記憶もない。


「ああ、言い忘れていた、可憐な子女が一人訪ねてきていたよ。」


顔色から察したのかソノラが答える。
思い出し笑いか少し楽しそうな声色で、


「眠ったばかりのご主人様を起こすのも忍びなくてね、
 昨晩遅かったと説明したら泣きながら走っていってしまったよ。」


「・・・まずい。」


100%誤解している、
そして泣きながら倉本に言いつけたに違いない、
何か現状を理論的に説明できる手段を見つけないと倉本に殺される・・・


「まぁ落ち着いてご主人様、コーヒーを淹れたから。」


頭を抱えた俺に
静かに差し出される、
お気に入りのカップに注がれたブラックコーヒー。


「ああ、ありがとう。」


コーヒーを一口、
急に迷い込んだ非日常から、
日常の味が滲み出して俺を冷静にさせた。
知っておきたいことはたくさんある。


「いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかいソノラ?」


「ん、ご主人様少し待ってくれないかい?もうすぐパンケーキが焼きあがるからさ。」


「・・・わかった、別に急いでもいないし。」


なんだかペースが掴めないなぁ、
ソノラはまるで自分の家のように台所を動き回っている、
ワイシャツ一枚で屈んだりするのはもう少し気をつけて欲しいけれども、
その淀みのない動きからは経験が感じられる気がした。



「うん、美味しいよ。」


たっぷり蜂蜜をのせたパンケーキは舌に残る甘味が心地いい、
すっかりブランチになってしまったけれど、
いつもはトーストで済ませているせいかひどく豪華に感じる。


「ご主人様に気に入ってもらえてよかった。」


テーブルの向こうでパンケーキをつつきながら、
にっこりと微笑む彼女を見ていると、
あの夜の恐ろしさを忘れてしまいそうになる、
でも俺は真実を知っておきたかった。


「教えてくれないかソノラ、あの夜の『化け物』たちは何なのか?」


ことりとフォークを落とし、蒼弥の瞳を覗き込むソノラ、


「異層の住人、この世ともあの世とも違う世界を蠢く魑魅魍魎、
 ご主人様の感覚で言う『本当の化け物』で間違いないよ。」
 

悪夢は現実だった、
何より彼女自身の『存在』がそのことを証明していた。


「あれだけ殺しておいて知らない振りは無いんじゃないかいご主人様、
 夜が明けるまでに射殺された『異形』の数はその存在と同数だった、
 つまりご主人様は昨日現れていたすべての『化け物』を殺したんだ。」


にっこりと微笑みながら彼女は言う。


あの記憶が真実であったと、

あの百鬼夜行の夜、

それを狩り尽くした弓とそれを引く者の存在を、

周りを埋め尽くす赤、赤、赤。

そして異形に突き刺さる漆黒の矢、

あれを引いていたのは確かに自分だった、

そうだ、雪村蒼弥は確かに『異形』を殺し尽くしたのだ、

ぐずぐずと手のひらから血を吸い続ける黒弓によって。



「ぐっ・・・。」


突然の眩暈、
突発的な頭痛、
強烈な吐き気。

それらを堪え、一番『聞かなければならない』質問をする。


「ソノラ、君はいったい何者なんだ?」


悪戯っぽく微笑むソノラ。


「そうだね、今はご主人様の飼い猫かな、昔のことは忘れたよ。」


やわらかく首を傾けながらソノラは、


「シャワーでも浴びてくるといいよご主人様、これから掃除をしなくちゃいけなくてね。」


「わかった、シャワー浴びてくる。」


考えなきゃいけないことは山ほどある、
でも今はまず一息付きたかった。





服を脱ごうとしたとき左手の手のひらが目に止まった、
そこには一本の『切れ目』が出来ていた、
そこに何が潜んでいるのかは本能的に悟った、
必要なとき以外『触れてはいけないモノ』だ。



「・・・・・・・・。」



シャワーのコックを捻る、
温めに調整した湯が頭の上から降り注ぐ、
全身に染み付いた血の匂いが少しずつ薄らいでいく気がする。



普段だったら六時間目を受けながら
うつらうつらと眠りの世界に旅立つ時間帯だ、
そして今、俺は夜に殺した『異形』と自分の血を洗い流している。


「・・つっ・・・・・。」


その現実に負けそうになりシャワーを受けながら膝を付く、
もう帰ってこない日常を思い少しだけ声を殺して泣いた、
それが俺と今までの日常との決別式だった。






「ふぅ、すっかり長湯になってしまった。」


シャワーを浴びて長湯と言えるのかは謎だが
そんなことはどうでもいい。


着替えを持ってくるのを忘れていた、
とりあえず腰にタオルを巻いて自分の部屋に向かおう。


「あ。」


「ん?」


廊下でばったりソノラと遭遇した。
道を譲らず仁王立ちしたままこちらの上から下までを吟味するように眺めるソノラ、


「どうしたんだよソノラ?」


「いや、また一つ言うのを忘れていたことがあってね。」


舌なめずりをしながら、
ゆっくりとこちらに近寄ってくるソノラ、


「この姿になるのは意外と力を使うのでね、できれば一日に一回は補充したいんだ。」


その視線は俺の首元に集中している、


「ご主人様だって、愛猫にはかわいい姿でいて欲しいだろう?」


「つまり、噛んで・・・吸う?」


こっくり頷いてソノラは飛び掛ってきた、
そのままの勢いで後ろに倒れる俺とソノラ、


「ちょっと待て!、別に首を噛まなくたっていいだろう、腕とかさ。」


「ん~、痛くしないしすぐ終わるから我慢してよご主人サマ~♪」


あ~ん、と口を空けるソノラ、犬歯が微妙に痛そうだ、


「ええい、人の話を聞け~!」


力の限りを尽くし体勢を入れ替える、
まるでソノラを組み敷いているような姿勢になった。
奇妙な沈黙が二人の間に・・・


「ん、ご主人様は積極的だね、まさか一日目から食べられちゃうとは思わなかったよ。」


「な、なにを言って・・・。」


「ん~♪」


一瞬チラッと上目遣いで俺を見た後、
目を閉じてキスをせがむ、
その扇情的な仕草に俺は・・・











その瞬間、勢いよく開く家の扉。


彩香と倉本が目を見開いているのがわかる、
分かっているとも、
ちょっとでもソノラにクラクラした俺が悪かったのさ、
目にも止まらぬ速度で繰り出された倉本のボディーブローを
喰らいながら俺はそんなことを思い意識を失った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーそこは暗い図書館の片隅だった


周囲の雑音に耳を傾けながら、
幾度となく読んだ古ぼけた魔道書を読み返す瞬間が好きだった、
薄暗い研究室には自分以外の人の匂いがしない、
そんな孤独から逃避するためによくその図書館を訪れていた。


生まれたときから孤独だった、
魔術師の子供として生を受けた自分もまた魔術師だった、
親の研究を引き継ぎただただ暗闇で過ごす永遠に等しい生、
魔術師が子供を生むのは自分が研究することに疲れたときだ、
子供が一人立ちできると判断すれば苦痛のない方法で自殺する、
だから父は常に生気のない瞳をしていた、
そして僕はそんな瞳を見て育った。


だから僕は孤独だった、
魔術書の海に沈みながら心は常に虚無だった、
ほとんど言葉を発したことが無かった、
誰かに僕が生きていることを認めて欲しかった。


「あの、なんの本を読んでるんですか?」


そんなときだ、
彼女と出合ったのは。
そして僕を孤独から救ってくれたんだ、


『綾・・・』


「彩っ・・・。」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やあ、ようやくお目覚めかいご主人様。」


マイペースなソノラ。


「軽く殴っただけのに気絶するなんて蒼弥の鍛え方が足りないのよ。」


まだ殴り足りないらしい倉本。


「蒼くん私のこと呼んだ~?」


いつもどうりの彩香。



俺はもう少し狸寝入りでもしていたほうがよかったのだろうか?
まったく状況が掴めない、
寝ていたソファに座りなおしソノラに問う、


「ソノラ、俺は何で寝てたの?」


「ふふ、そこの逞しいほうの子女のボディーブローで寝ていたんだよ。」


「な、何よ逞しい方って!他に言い方があるでしょう、気にしてるのにぃ~!!」


「蒼くん蒼くん大丈夫、どこか痛いところない?」


「ん~、腹が底の方から響くように痛むよ、しばらく動けない。」


「どうせ筋トレ、サボってたんでしょう。殴った感じで分かるわ。」


あなたは中国拳法の達人か何かですか倉本さん。


「さて、そろそろ夜も更けてきたし、お二人にはご帰宅願おうかな。」


「えっと、蒼くん聞いていいかな?」


「なんだ、だいたい質問は予想できるけど。」


「「この人誰?」」


綺麗にハモった質問は予想どうりだ、
どうする?
これ以上倉本に殴られるのは御免だが、
二人を納得させられるほどうまい嘘が思いつかない。


「えっと、そのだな・・・。」


「「ふんふん。」」


「ソノラは昨日からご主人様に飼われているのさ、お二方。」


「「・・・・・・・・・・・・・・。」」


ああ、まずいやばい危険逃げろ何処にニゲロニゲロニゲロ・・・。


「さて、疑問も解決したことだし遅くならないうちに帰ったほうがいい、最近は物騒だからね。」


たしかにそろそろ日が暮れて『夜』の時間がやってくる、
どこからともなく『声』が聞こえ出し、
『異形』が踊る夜が・・・。


「二人とも、そろそろ帰ったほうがいい、詳しいことは明日学校で説明するからさ。」


「蒼くん、でも・・・。」


「いいから、早くするんだ!」


「う、う、ひっく。」


「なによ、急に怒鳴ることないでしょう蒼弥。」


「ああ、御免な別に怒った訳じゃないんだ、まだ明るいうちに帰ったほうがいいと思ってさ。」


「それにしたって少し変よ蒼弥、さっきからそわそわして落ち着きがないし。」


「ん、そうかな、寝起きだから調子が悪いだけだよ。」


「まぁいいわ、じゃあ納得できないけど帰りますか藤崎さん、いつまでもぐずってないで。」


「うう~、だって蒼くんが~、くすん。」


「悪かったよ彩香、また明日迎えに来てくれな。」


「うん、わかったよ蒼くん。ぐす」


二人して不満顔だったけれど完全な日没の前に二人を家に帰せた利点は大きい、
これから俺が遭遇するであろう狂気と殺戮のことは彼女たちには知って欲しくない。


さっきから左手が疼いている、
『左手の中に潜んでいるナニカ』が獲物を求めて躍動を始めている。


「それなりの覚悟はできてるってことかいご主人様。」


「この弓を握った瞬間から後戻りは出来ないって気が付いていたさ、
 だからあいつらと徹底的に戦ってやろうと思ったんだ。」


「ん~、ご主人様は前提を間違えてるね、
 ご主人様の言う『化け物』はそれこそ無限に沸いてくる、
 だからどうやって『巣』を見つけるかが問題なんだよ?」


「『巣』を破壊すれば『異形』は沸いてこないのか?」


「だいたいは、そんな感じの仕組みで動いてるのが多いかな。」


この『音』を消す方法がこんなに簡単に見つかるなんて思ってもみなかった・・・


「おそらく何らかの魔法、術式、儀式によって副産物的に生み出されている、
 あまりにも魔的濃度の薄い『屑』ばかりだからね。」


「そうか、その魔法陣みたいなのを探せばいいんだな?」


「ん、分かりやすく言えばそうなるね。」


その瞬間に響いてくる遠吠え、

『夜』の始まりだ。




寒さはまるで感じなかった、

まるで自分の体が別物のように滑らかに力強く動く、

物陰に潜み、標的とした『異形』に悟られる時を与えず初撃で殺す、

のそのそと歩く熊のような『異形』は額を打ち抜いて、

奇形の人形は全身に矢を浴びて針鼠のようになった、

一歩で家の上に飛び上がり見える範囲のすべての『異形』に矢を放つ、

次々と動かなくなる『異形』、

ああ、今の自分の心に浮かぶのは歓喜か狂気か殺意か恐れか、

おそらくそのどれでもない、

弓に命じられるまま敵を貫くただの人形だ、

それは同時に『俺が望んだこと』でもあった。

夜の闇を音もなく弓と人形が走る、

ただ聞こえるのは、

断末魔の叫びと弓が鳴く音のみ。



「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・。」



ぽたぽたと真っ白い雪の上に流れ落ちる血液、

暗闇と沈黙、

また現れ始める『異形』、

黒猫の鳴き声が聞こえた気がした。
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http://www.perryiagolf.com/

エロゲ
Glenna Alvarez URL 2007/12/16(Sun)11:09:12 編集
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